パン屋開業は“起業”である!経営者として知っておくべき物件選びのポイント

目次

パン屋を開業するにあたって必要なのは、美味しいパンを作るための技術だけではありません。開業するということは、つまり、「その店の経営者になる」ということです。そのためには、店を健全に運営していくための“経営力”が必要となります。中でも、「パン屋にぴったりの物件を選ぶ力」は、開業するにあたってはじめに試される重要な経営力の一つです。

では、パン屋に最適な物件とは、具体的にどんな物件なのか。ここでは、物件選びの基準やポイントに加えて、居抜き物件活用の意義についても詳しく説明していきます。

1) 何を基準に物件を選ぶべきなのか?

物件選びにおいて大切な基準は2つあります。

ずばり、「立地」と「費用」です。

1 「立地」

繁華街や駅前は家賃がかなり高いため、合理的な選択とは言えません。特に、店の中で製造するお店の場合は、より広いスペースが必要になるので家賃も上がり、売り上げと経営維持にかかる費用との採算が合わなくなるからです。

また、「駐車場の有無と広さ」は必ず確認するべき点です。パン屋を訪れるお客さんには女性が多いです。そのため、狭小なペースしか取れない場合は切り返しが難しく、「あそこのパン屋は行きにくい。」というイメージがつきかねません。

特に郊外であれば、車で訪れる人は多いので、最低でも2台分は必要でしょう。駐車場を設けることなく、店頭の道路に停めるお客さんが多いと、クレームにつながり、店のイメージそのものがダウンすることになります。

2 「費用」

物件の費用を合理的に決めるには、どうすればいいのか。

それには、計画(シミュレーション)が必要になります。

例えば、次のような感じです。

ここでは、比較的小~中規模のパン屋開業を想定し、売上・家賃・材料原価・人件費・光熱費・包材・広告宣伝費、をシミュレートします。

家賃は、ある程度人通りが多い立地だと、坪当たり12,000円~15,000円が相場と言えます。ここでは、12,000円とします。必要坪数は、販売方法にもよりますが、最低でも10坪(対面式販売の場合など)は欲しいところ。ここでは、15坪とします。

すると、月々の家賃は、

家賃:12,000円×15坪=180,000円/月

となります。

このように算定したものが以下です。

売上     400万円(16万円×25日)

家賃     18万円

材料原価   150万円

人件費    100万円

光熱費    20万円

包材     8万円

 

広告宣伝費  8万円

売上から費用を差し引くと、「96万円」残ります。そこから、設備・工事等の借金を月々返済したり、駐車場代を支払ったりして、残った金額が自分(経営者)の給料となるわけです。

この程度の数字がクリアできれば、おおむね良好と言えます。(これらの数字は、あくまで参考です。)費用を安く抑えることだけに目を奪われて物件の質をむやみに落とすと、“開業後のモチベーション維持”も難しくなるため、気を付けて下さい。

そして、これら二つのポイント、特に“費用”の面を少しでも有利に進めるために活用したいのが“居抜き物件”です。

2) 居抜き物件とは?メリットとデメリット 

1 居抜き物件とは?

居抜き物件とは、「前のテナントが使用していた設備、造作、内装などがそのまま残されている物件」のことです。新規開業の際にこの居抜き物件を上手く活用できれば、様々なメリットが得られます。主なメリットは三つです。

2 メリット
  • ・初期費用が抑えられる
  • ・開業までの期間が短縮できる
  • ・以前のテナントのお客様を取り込める

たとえば、以前のテナントがパン屋であれば、厨房の専用設備(オーブンやドゥコンなど)が残っていることもあります。新調すると200万円は軽く超えてしまうような費用を、他に回すことができます。また、費用が浮く分、早期の目標利益達成にもつながるので損益分岐点を短期間でクリアすることにもつながります。

開業のための工事期間も大幅に削減できます。開業までスムーズに進むことは、自らの不安を解消できるメリットにもなるでしょう。さらに、短い工期は、以前のテナントに通っていたお客様を他の店に逃がさないためにも有効です。

さて、「物事の表には必ず裏がある」と言われるように、居抜き物件にも少なからずデメリットは存在します。大きくは二つです。

3 デメリット
  • ・設備や建物の老朽化により不具合が起こりやすい
  • ・前テナントの評判が悪い場合がある

元々使用されていた設備や建物を引き継いで使用することになるので、機械の故障による買い替えの費用が掛かったり、壁のクラック(ひび)や塗料の剥がれの補修に手間がかかったりするケースがあります。

また、以前その店に入っていたテナントのお客さまからの評判が悪かった場合、その悪評を少なからず引き継いでしまうこともあるでしょう。同業種なら尚更、デメリットになり得ます。

このように、「居抜き物件だから絶対に良い!」というわけではないことも知っておきましょう。事前の入念なリサーチは必須です。

まとめ

いかがでしたか?パン屋の開業を考えている方、居抜き物件について知りたい方にとって、参考になれば幸いです。