小豆と餡の歳時記・晩秋から正月にかけて

小豆と餡の歳時記・晩秋から正月にかけて

晩秋から正月にかけても、小豆を使った料理やおやつは数多く登場します。

冬至は一年で最も日が短い日で、この日から昼間の時間が徐々に延びていきます。

昔から冬至は暦の起点とされる大切な日とされ、ゆず湯に入り、小豆粥や小豆とかぼちゃの煮物を食べて無病息災を願ってきました。

☆炉開きと餡

昔から亥の月の亥の日に、こたつや火鉢を出したと言われていますが、茶の湯の世界においても11月は茶人の正月といわれるほど、「炉開き」は大切な行事であったようです。

餡を使った和菓子は、茶の湯とともに広がって行ったようですが、今も和菓子の原点と言われるぜんざいが炉開きの主菓子として用いられることが多いようです。

関西では11月に入ると「亥の子餅」といって、猪の赤ちゃんウリ坊をイメージした小豆のあんこを包んだ求肥の和菓子を食べる風習があります。

亥の子餅は、平安時代に紫式部によって書かれた『源氏物語』にも登場する歴史のある和菓子ですが、現代の炉開きにも亥の子餅は用いられています。

お茶人に長命の人が多いのは栄養価の高い小豆あんを食べ、抗酸化作用のある抹茶を飲んでいるからとも言われています。

☆御事汁といとこ煮

12月の8日は昔から事納めの日とされてきました。

これは農作業に基づいたもので、一年の締めくくりの日として御事汁(おことじる)を食べる風習がありました。

御事汁は六質汁(むしつじる)とも言われ、野菜を中心に6種類の具を入れたみそ仕立ての椀物です。

里芋、大根、人参、ゴボウ、こんにゃくなどに必ず小豆を加えて作られていました。

また、農作業を始める事始めの2月8日もこの小豆の入った御事汁を食べて豊作を願ったと言われています。

一年の内で最も日が短い冬至にはかぼちゃと小豆を煮た「いとこ煮」を食べる風習もあります。

☆新春とあんこ

ところ変われば品変わると言いますが、お正月の雑煮にあんこ餅を用いる地方や、お雑煮の代わりにぜんざいを頂く風習がある地方があります。

四国の香川県では、白みそ仕立てのみそ汁にあんこ餅を入れた雑煮が一般的に食べられています。

また、鳥取県の海岸地方では、小豆雑煮といって丸餅を入れたぜんざいが雑煮として食べられているようです。

昔は甘いあんこはとても貴重なもので、普段はめったに食べることができなかったため、お正月くらいは贅沢をしようとの思いから、あんこの入った餅を雑煮に使ったり、小豆雑煮を作って食べたと言われています。

高級な食べ物として庶民には常に口にすることができなかった小豆のあんこですが、毎年1月の15日は、女正月といって女性たちは小豆粥やお汁粉を食べて一休みをしたと言います。

小豆は年末からお正月の疲れを癒し、鋭気を養うための大事な食材だったようです。